高周波ラジオ波メス:当院のプローブは単極子と双極子両方有り(写真:双極子)
当医院では、花粉症・アレルギー性鼻炎に対する手術治療として、粘膜焼灼術を行っています。
アレルギー性鼻炎の治療の原則は、あくまで抗原回避や薬物治療です。粘膜焼灼術はこういった治療で充分な効果が得られない方が対象になります。特に鼻づまりの症状が強い方、薬が効きづらい方はよい適応になります。
あまり通院が出来ない方、妊娠を考えられている方もよい適応です。妊娠を予定されている方は妊娠前にこの治療を受けておくことをお勧めします。
粘膜焼灼術にはレーザー焼灼手術、高周波電気やラジオ波による粘膜凝固治療、アルゴンプラズマ凝固法などをもちいる方法がありますが、当医院では高周波ラジオはメスを用いています。
単極 | 双極 | |
---|---|---|
局所麻酔注射 | 必要なし | 必要 |
下甲介深部焼灼 | 不可 | 可 |
鼻甲介骨焼灼リスク | × | ○ |
術後下甲介痂皮 | 有り | 少ない |
術後処置要 | 要 | 少 |
[表1]高周波ラジオ波メスの単極と双極の特性比較
高周波ラジオ波メスの電極は、単極子と双極子があります。単極子と双極子の違いを[表1]に示すとおりで、当院のプローブは単極子と双極子両方あります。
双極子では深部焼灼が可能ですが、針を鼻粘膜に侵入させるため、鼻粘膜への局所麻酔注射の必要があります。双極子による鼻粘膜の深部焼灼では鼻腺や周囲組織も含めて焼灼させると考えられ、レーザー治療で効果がなかった方にも効果がある場合があります。
当医院では、患者様をまず診察して花粉症・アレルギー性鼻炎の状態に応じて、手術を行っております。手術の予約は診察を行ってからになりますので、インターネット、電話での手術予約は行っていません。
術後はしばらくの間、創部のかさぶたや分泌液が固着することにより鼻が詰まった状態になります。1週間後に受診されるときに、鼻内の清掃を行うことでかなり鼻閉が改善されます。特に鼻閉のひどい方は、1週間待たずに受診されても構いません。
粘膜焼灼術はアレルギー性鼻炎を治すものではありません(根治的な治療法ではありません)。1回の治療で効果は粘膜の再生する1~2年持続するといわれています。ただし、この手術は繰り返し行えるので、再度手術を行うことは可能です。 鼻の適度な通り具合と鼻本来の機能である加湿・加温作用を両立させる必要がありますので、 粘膜の焼灼をやりすぎることは避けなければいけません。そのため、まずは焼灼の程度をやや抑え目にして、術後十分な改善が見られなければ追加焼灼を行うという段階的な方法が好ましいと考えています。鼻本来の機能を温存することを優先するならば2回もしくは3回に分けて行う方法がよいと考えます。
手術時期としては、手術後に鼻の中が腫れて一時的に症状が悪化するため、スギ花粉症の場合は9月から、遅くとも1月初めまでに手術を受けることをお勧めしています。手術後の効果を見て、必要があれば花粉の飛散時期までに追加焼灼を行います。いずれにしても、手術の前には医師の診察を受けて、手術の効果が見込めるかどうかご相談下さい。
まず、鼻の中に麻酔薬と鼻の粘膜を収縮させる薬をスプレーし、5分程度待ちます。その後鼻の中に麻酔薬を付けたガーゼを入れて約15分間麻酔を行います。
ガーゼを抜き、粘膜下の焼灼を行う方は麻酔液を下鼻甲介粘膜に注射し、その後高周波メスで下鼻甲介の粘膜下の焼灼をします。その後下鼻甲介粘膜を高周波メスで焼灼します。手術にかかる時間は片側約10分です。その後、具合が落ち着いていれば帰宅となります。手術後に鼻の炎症を抑える薬を処方しますので、次回来院時まで服用をお願いしています。痛み止めもお出ししますが、ほとんどの方は内服せずに済んでいます。
特に問題ない場合は、次回の診察は約1週間後になります。手術後の分泌物やかさぶたで鼻づまりの症状が強い場合は早めに受診して頂いてもかまいませんが、基本的に毎日通院する必要はありません。
手術当日は、激しい運動は禁止です。水泳や飛行機も鼻の中のかさぶたがとれてくる術後2~3週までは避けてください。
また、手術後は、鼻の中がヤケドしたような状態になるため、一時的に鼻が詰まり、鼻水がたくさん出ます。鼻水に血が混じることもありますが、特に心配はいりません。約2~3週間かけて粘膜に付いたかさぶたが剥がれます。かさぶたが剥がれきると、鼻は安定した状態になります。
治療は全て健康保険が適応されます。両側の手術を行った場合、手術費用だけで約5~6千円になります(負担率3割の場合)。これに再診料(場合により初診料)、処方箋料などが加わります。
*本治療の適応になるかどうか診察の上判断いたしますので、鼻づまりでお悩みの方はまずはご相談ください。